2004.4.19更新


BZ反応について





BZ反応とは・・・

 1951年、ロシアの科学者、B. P. Belousovが生物の代謝経路(クエン酸回路/TCA回路)を模倣した化学反応系を考案し、実験を行ったところ、溶液の色が時間的に振動することを発見した。ところが、この現象は当時の常識では考えられないことで、認められなかった。1964年になって、同じくロシアのA. M. Zhanotinskyが追試を行い、この現象が正しいことを確認、さらに、1970年頃には、この化学反応溶液を静かに置いておくと、同心円状のパターン(ダーツ等の的のように見えることからtarget patternと呼ばれる)が発見された。二人の名前をとってこの反応はBelousov-Zhabotinsky反応と呼ばれる。それ以降、興味を持たれて、多くの研究がなされている。


実験

 次の組成(例)の溶液を作る。但し、1〜4の溶液を先に混ぜ合わせる。臭素が発生して溶液が黄色くなるので、この黄色が消えて溶液が透明になるまで待ち、その後にフェロインを加える。

1臭素酸ナトリウムNaBrO30.15 M
2硫酸H2SO40.30 M
3マロン酸CH2(COOH)20.10 M
4臭化カリウム(臭化ナトリウムでも可)KBr0.03 M
5フェロイン[Fe(phen)3]2+5.0 mM

この溶液をスターラーで攪拌しながら観察すると、赤い状態(還元状態)と青い状態(酸化状態)を交互にとる(図1参照)。

BZ batch red BZ batch blue
図1:BZ反応溶液を攪拌しながら観察したとき。還元状態(赤・右)と酸化状態(青・左)を振動する。動画は、bzbatch.mpg (3.59MB)

この溶液をメンブランフィルター(目の細かいろ紙のようなもの)に染み込ませ静かにおいておくと、図2のようなパターン(target pattern)が見られる。酸化状態の部分がだんだんと伝播していくように見える。

target
図2:BZ反応溶液をメンブランフィルターに染み込ませ、静置したとき。ダーツの的のようなので、ターゲットパターンと呼ばれる。動画はtarget.mpg (5.02MB)。4倍速にしてある。

次にこのパターンの一部を撹乱する。この反応溶液に銀線を当てると酸化状態になり、鉄線を当てると酸化状態になりにくくなる。これらの現象を利用して、連続している波の面を壊すことにより、パターンは螺旋型に変化する(spiral pattern)。一例を図3に示す。


図3:ターゲットパターンに擾乱を与えると、波の一部が切れて巻き込み、螺旋型のパターンができる。このパターンは安定で、このまま螺旋を描きつづける。動画はspiral.mpg (5.01MB)。4倍速にしてある。


モデル

 このBZ反応に関して、いろいろなモデリングの仕方がある。セルオートマトン(Cellular Automaton)もその一つである。セルオートマトンとは、空間・時間を離散化した上で、状態まで離散化するモデリングの方法のことである。このモデルにより、target patternとspiral patternを再現できる。もっと現象論に近づけると、反応拡散方程式(Reaction-Diffusion Equation)で記述することができる。反応拡散方程式は、系の時間発展を化学反応による濃度変化の項と、空間的な拡散の項で表現する。つまり、次のような形をとる。
    equation
あるいは、N変数として成分表示すると
    equation
ただし、拡散テンソルの非対角成分は0とした。
その中で、Oregonatorと呼ばれるモデルが一般的によく知られている。BZ反応では約30の化学種が関係すると言われているが、反応速度のオーダーの違いを考慮して、3つの化学物質だけに注目して作ったものである。更に、変数を一つ落として2変数のOregonatorが考案された。文献[2]に、Oregonatorが考案された詳しい記述がある。ここでは、2変数Oregonatorの例をあげておく。2変数、u、vはそれぞれ、HBrO2、[Fe(phen)3]3+の濃度を表す。
    equation
    equation
    equation
    equation
ここで、f、ε、qはそれぞれ興奮(=酸化)の閾値、興奮性、反応速度定数に対応するパラメータであり、これらを変えることにより系の性質が変わる。


BZ反応に関連して

BZ反応がよく研究されている理由として次のことが挙げられる。
  • 自己触媒過程(生成した物質が触媒となって更に反応を促進する)があるために非線形性が顕著に表れる・非線形振動子として考えられる
  • 反応拡散系を実空間で実験できる系であり、パラメータを振りやすい(振動状態と興奮状態を簡単に実現できる)
  • 実験系として簡単に扱える・危険性が低い
このような理由で、現在にいたるまで、主に次のような関連で研究が行われている。
  • 攪拌系において、リズム(一定した振動)やカオスが見られる
  • 反応容器を結合させることによって、非線形結合振動子系になる
  • 静置した状態でパターンを形成させ、反応拡散系として考える
  • 生物の代謝経路(クエン酸回路/TCA回路)のモデル
  • 興奮性にすると、神経伝達の方程式とよく似た形になるため、情報処理のモデルとして
このように、BZ反応は非線形現象の実験系としては、Benard対流と並んで、有名な実験系である。


参考文献

[1] 非線形科学---分子集合体のリズムとかたち--- 吉川研一著 (学会出版センター)
[2] 非平衡系の科学III 反応・拡散系のダイナミクス 三池秀俊・森義仁・山口智彦著 (講談社)

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