2006.5.22更新


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研究内容


 私は、時間的・空間的に自発的に形成される秩序構造に興味があります。そのため、これまで、有機分子や高分子の自発的な秩序形成(結晶構造・折り畳み構造)について研究を行ってきました。現在は、空間的な秩序構造だけでなく、時間的な秩序構造のことも考えたくて、生物時計の研究を物理的な視点から行っています。
 それぞれの研究の具体的な内容は、以下のようなものです。

エピタキシャル成長(エピタキシー)に関する研究

エピタキシャル成長とは?


 物質がある基板結晶状に成長するとき、基板結晶のポテンシャルの影響で、一定の方位関係を持って成長する場合があります。このような結晶成長の様式のことをエピタキシャル成長(エピタキシー)といいます。一般にエピタキシャル成長には、結晶化界面での格子整合(基板結晶の格子点上にエピタキシャル結晶の格子点が乗るpoint-on-point整合)が重要な役割を果たしていると考えられてきましたが、有機分子以上の大きな分子量を持った物質のエピタキシー発現においては、基板となる無機結晶に対する有機結晶の対称性の低さと、格子定数の大きな違いから、point-on-point整合は不可能であり、初期に発生する分子3,4個のクラスターが、エピタキシャル方位関係を決定すると過去に報告されました(Walton,1963)。これに対し近年、新たな格子整合条件として、point-on-line整合(基板結晶の格子線上にエピタキシャル結晶の格子点が乗る)の重要性(Hoshino,1995)が注目されています。
 以下の研究は、有機結晶、高分子結晶のエピタキシャル成長における、界面での格子整合の役割を明らかにするために、主に電子顕微鏡を用いて実験観察を行ったものです。

「銅フタロシアニン(CuPC)のKCl基板上エピタキシャル方位の解明」


 CuPcのKCl基板上でのエピタキシャル方位は、1966年にAshidaによって決定されました(Ashida,1966)。しかしこの結果はWaltonの報告にのっとったものであり、界面での格子整合条件は満足されていません。そこで本研究では、界面での格子整合条件のことを考慮に入れ、Ashidaの結果を再考察しました。その結果、エピタキシャル方位関係(私の実験担当分)とCuPcの格子定数、結晶系についてAshidaの結果に誤りを見出し、界面においてpoint-on-line整合条件をほぼ満たしていることを明らかにしました。
 この研究によって、有機分子のエピタキシャル成長(少なくともCuPC/KCl系)においては、格子整合に基づく界面エネルギーの安定化がエピタキシー発現に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。   論文1論文2.

「ポリエチレン(PE)結晶のエピタキシャル成長」


 前研究で、有機分子のエピタキシー発現における、格子整合の重要性が明らかになったので、本研究では、高分子のエピタキシー発現における、界面での格子整合に焦点を当てました。実験試料として、最も簡単な構造を持つ高分子、ポリエチレン(PE)を用い、高配向グラファイト基板結晶(HOPG)上でのエピタキシーを観察しました。PE/HOPG系では、溶融体からの結晶成長におけるエピタキシーがすでに報告されています(Tracz, 2002)。本研究は、Traczらとの共同研究の一環として、PE/HOPG系のエピタキシャル界面の詳細構造を調べる事を目的としました。これまでにPE/HOPG系では、方位関係(001)[100]HOPG //(110)[001]PE orthorhombicが報告されています(Tuinstra, 1970)。
 透過型電子顕微鏡を用いた再実験(PE薄膜結晶の膜厚約100nm)では同様の結果を得ましたが、観察された構造がPE/HOPGの界面でも実現されていると仮定すると、界面での格子整合条件は満足されないことになってしまいます。そこで本研究では、基板結晶からPEを剥がしとる必要のない観察法、反射高速電子線回折(RHEED)を用いて、薄膜を基板結晶から剥がす過程における結晶構造の変化を回避し、より詳細で的確な観察を行いました。膜厚20nm以下のPE超薄膜を作成し観察した結果、界面では、バルクでは見られないPE monoclinic構造が存在して、格子の整合条件を最もよく満たす関係(001)[100]HOPG //(010)[001]PEmonoclinicが実現し、膜厚が厚くなるにつれてPEはorthorhombic構造へ転移することを明らかにしました。
 本研究によって、高分子のエピタキシャル成長(少なくともPE/HOPG系)においても、格子整合に基づく界面エネルギーの安定化がエピタキシー発現に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。   論文3

単一高分子の折り畳み構造に関する研究

「単一高分子鎖が形成する折り畳み構造:トーラスの形態変化」


 DNAはSemiflexible鎖に分類され、高分子物理学の観点から見ると、非常に興味深い様々な挙動を示します。その一つとして、溶液中の長鎖DNA単分子は、多荷カチオンや中性高分子などの凝縮剤によって、Coil状態からGlobule状態への一次相転移を起こし(Yoshikawa, 1996)、球やトロイドといった多様な秩序構造を示す(Yoshikawa, 1999など)ことが挙げられます。これまでにDNAのこのような物性については、実験、理論、シミュレーションの各方面から研究されてきましたが、特に理論、シミュレーション研究においては、DNAの実効的な分子鎖の太さが規格化定数として扱われてきました(Ubbink, 1996など)。しかし我々は、側鎖に糖をもつ高分子によって、DNAの実効的な分子鎖の太さが増し、特徴的な構造をとることを実験で明らかにしました。このため、DNAの実効的な分子鎖の太さを陽に扱う理論が必要になり、その構築を行いました。
 本研究では凝縮状態のDNAをトロイド形であると仮定し、その断面を簡単のため円と直線の積で表わします。DNAの単分子物性として実効的な分子鎖の太さと硬さのみを考え、全長一定条件の下で、全エネルギー(曲げ弾性エネルギーと表面エネルギーの和)を最小にするようなトロイドの形を求めました。
 本研究により、DNAの実効的な分子鎖の太さが凝縮状態に与える影響が明らかになり、DNAの単分子物性とトロイド構造との関係を明らかにするような数理モデルを構築できました。また、電荷の効果を陽に取り入れなくても、トロイドの形状変化は記述できること、電荷の効果によって(トロイド形状に関していえば)Multi-toriができること、が明らかになりました   論文4論文5論文6

「DNAの構造転移と遺伝子活性メカニズム」


 現在進行中です。